
尋常でないリネン麻(亜麻)の値上がり
気候変動による不作といわれていますが、リネン麻の高騰が止まりません。この2年は特に顕著です。かつては60番手と40番手ははっきり価格が異なっていました。もちろん細番手の60番手の方が高価だったのです。
ところが、昨年(2024)末に仕上がってきたハードマンズの60番手と40番手は、60番手が値上がる前の糸があったため、価格が逆転するという状況になりました。
40番手に至っては5年ほど前からすると糸の段階で2倍以上の価格に跳ね上がっています。これだけ急激に上がってしまうと訳がわからない状態といえます。
LF40ハードマンズのフレンチリネン40番手のシングルサイズのボックスシーツ価格は2018年は8,000円(税抜)でしたが、じわじわと上がり続け2021年に11,000円、現在の価格は15,000円です。
この価格は、生地を500m単位で仕入れ、縫製工場でカバーやシーツに縫製した、中間の流通マージンをほぼ除いた、いわば製造直売ともいえる価格なのです。
上質な細番手用のフラックス原料が少ない
80番手以上の上質な細番手のリネン糸を作るには、繊維長の長いフラックス原料が必要です。ところが、気候変動の影響(気温上昇)なのからか、上質なフラックスが得られなくなってきました。
5年ほど前に訪れたハードマンズの紡績工場でも、100番手用の原料は数が限られると聞いていますが、現在ではほとんど手に入らない、とも聞きました。実際細番手の糸の製織は難しく、糸切れを起こしやすいため製織のスピードを落とす必要があるのだそうで、生地価格の高騰に拍車がかかっています。
原料そのものの質の低下が、細番手のリネン糸の紡績を困難にし、価格がつり上がる一因となっているようです。
ラミー麻(苧麻)はというと
日本古来より使われてきた、シャリ感の強いラミー麻(苧麻)は、原料産地が湖南省から四川省に移りました。もっと儲かる商品作物への転換が行なわれているといわれています。
そのため、ラミー麻の価格もリネンと比例して上がっています。質の高い水準の原料が得られにくくなっているのもリネン同様のようです。
話題のヘンプ麻(大麻)はどうなっているのか・・・
これが、あまり良くわからないのです。中国では黒竜江省などで、肝いりでヘンプの生産を高めているといわれてきました。リネンが6年に一度しか植えられないのに対し、ヘンプは直ぐに育ち、年3回の収穫も可能と聞いています。
であれば・・・ヘンプ麻はもっとコストが低いはずなのですが、現実的にはリネンより高い相場です。紡績が難しいらしく、3~4年前にヘンプ60番手のサンプル生地でカバーを作って使ってみましたが、コストはリネンより高く、使う風合いはリネンの方が上質です。
生産するのに環境負荷が少ないため、SDGsに適した素材として脚光を浴びていますが、原料や糸の状況がよくわからないのが現状です。ちょっと突っ込んで勉強する必要がありそうです。
静岡の方でヘンプ80番手のローンを織っている機屋さんがあって、サンプルを取ってみました。生地の風合いは悪くはありません。良いかとおもったんですが・・・このクラスの麻生地はアパレル向きに63インチ織機で織られるため、生地巾が130cmぐらいにしかないものが多いんですね。この生地で掛布団カバーを作ろうとすると1+1/4の生地巾が必要になり、160cm巾の生地で作るのに比べ、どうしてもコスト高になります。織りの手間だけでいうと63インチも+75インチも大して変わりはないのです。接ぎが入るとデザイン的にも今一つなわけです。
寝具用には155cm巾、本当は160cm巾が欲しいため70~75インチで織る必要があります。当社のLI80アイリッシュリネン80は75インチ織機で密度を上げて織っているので、甘織りの生地に比べると少し硬いのですが、生地の耐久性が上がっています。そのため、1000mの製織ロットで発注する必要があるのです。
なかなかやっかいですね。