リネン混とリネン100%の本質的な違いとは?

麻のよもやま話

一口にリネンといっても、いろいろ

リネンだけに限りませんが、リネン麻の製品の中には、リネン麻100%のものと、リネン麻混-たとえば麻50%綿50%のように混紡したもの、大きく2つに分けられます。

リネン麻100%でも全部同じではない

麻番手というのは、麻糸の太さを表します。数字が大きいほど細い糸になります。一般的に多く出回っているのは40番手前後のものでしょう。これが60番手、80番手、100番手と細くなるにつれ、より良質の亜麻原料(フラックス)が必要になります。

以前にフランス・ノルマンディー地方のリネン麻(フラックス)農場を訪ねた際に、リネンのグレードは10段階に分けられると云われました。また、ハードマンズ社提携のリネン糸紡績工場では、100番手クラスとなると、相当良い原料でないと無理であり、いつでも紡績できる訳ではない、原料の良し悪しに左右されるということでした。

ハックリング工程で出てくるリネンゴミ

これはリネン糸を作るハックリングという工程です。リネンの麻原料(フラックス)を櫛のようなもので梳いて良いモノだけを残します。そうすると、横にリネンのゴミが多く出ます。これらは綿でいうと落綿。糸になりきれないリネンです。

粗紡糸を作る段階で品質を調節する

ハックリングされた後スライバーが作られます。良いスライバーはこのように光沢があります。さらにスライバーを何本か合わせて粗紡糸が生まれます。

この例では14本のスライバーから粗紡糸が作られますが、コストを下げる場合には、ここで品質の低いスライバーを何本か混ぜるのだそうです。

同じ40番手、60番手の糸であっても、この段階で品質が変わってくるのだそうで、一般にはこの過程を見せることはないと聞きました。

乾式紡績と湿式紡績では毛羽が違う

粗紡糸から糸を紡績しますが、乾式紡績と湿式紡績の二種類の方法があります。質の良いのは湿式紡績で、毛羽の量が全く異なります。

左が乾式紡績で、右が湿式紡績です。歴然と違います。上質な良いリネンにとは湿式紡績から生まれます。

このようにリネン100%といっても、素材の良さだけでなく、紡績工程によっても品質に違いが出るのです。

麻混の糸は、低品質の麻を交ぜることが多い

ここに麻50%綿50%の糸があったとします。綿100%の素材を100の価格として、麻100%の素材を300の価格とします。それでは麻50%綿50%の糸は(100+300)÷2=200でしょうか?

そうではありません。いや、真面目に作ればそうなりますが、実際はなかなかそうはなりません。前のハックリングで出たリネンのゴミがあります。これらは、単独で紡績することはできませんが、成分的には麻100%であることは間違いありません。これらを綿などの素材と混ぜると、麻混の糸となります。綿のお蔭で紡績して原料にできるのです。あるいは、もう少し太番手の麻糸と混ぜることもあります。

つまり、成分的には麻100%であっても、その内容は品質等で全く異なることになります。昨今のアパレルを見ていますと、やはり低価格ラインでリネン麻100%というのは非常に少なく、麻混紡のものがずいぶんと増えていますが、これもコストを抑えるための、ある種の工夫?なのでしょう。

本物を得るということは、真面目でなければできません。

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