アイリッシュ、フレンチ、ベルギー、リトアニア それぞれリネンの違い

よもやま話

アイリッシュリネン、フレンチリネン、ベルギーリネン、リトアニアリネン それぞれの違いが分からないという方も多いので、もう一度整理をしてみます。

アイリッシュリネン

アイリッシュリネンというとき、大きく2つの流れがあります。

アイリッシュその1 ハードマンズのリネン

私どもでアイリッシュリネンと呼んでいる製品がそうです。リネンのロールスロイスといわれたアイリッシュリネンの最高峰であったハードマンズ社自体は、今では残っていませんが、そのポリシーと技術を受け継いで作られるハードマンズブランドのリネン麻糸を使ったものです。

原料はフランスのトップグレードを使い、紡績は中国、製織は中国・日本です。(当社のリネン生地は日本で製織したものがほとんどです)

産地表記としてのアイリッシュではありません。リネンの最高級品としての品質を持ったハードマンズの糸を使った生地を、品質への尊敬をこめて「アイリッシュリネン」と称します。

Herdmans ハードマンズのリネン
ハードマンズHerdmans社は1835年に設立されたアイリッシュリネンの紡績メーカーです。ヨーロッパでも最高級のリネンの紡績メーカーでした。ハードマンズ社はそのリネンの品質の高さから「リネンのロールスロイス」とも云われたのです。眠りのプロショップSawadaではハードマンズ社のライセンスを受けた高品質のアイリッシュリネン生地を提供しています。

アイリッシュその2 アイリッシュリネンギルドのリネン

アイルランドにあるアイリッシュリネンギルドという団体に属するリネンの生地メーカーが主です。クオリティに関しては良いものもあれば、そうでないものも散見されます。

アイルランドで織っているということが基本(例外もあり)だそうです。原料はフランスが多く、紡績は高級品はフランス、大半は中国、製織はアイルランドもしくは中国で行われているものもあるそうです。

リネン産地の表記について アイリッシュリネンとは?
アイリッシュリネン、ベルギーリネン、イタリアリネン、フレンチリネン、リトアニアリネン、国産リネン等々リネンの産地表記にはさまざまな方法があって混乱しているのも事実です。今日アイリッシュリネンというブランド名として、リネンのロールスロイスといわれた、ハードマンズ社のライセンスで作られた60番手以上の高品質のリネン糸を使った生地に眠りのプロショップSawadaは使っています。

フレンチリネン

フレンチリネンは高級品とされていますが、これは正しくありません。大きく2つぐらいに分けられます。

フレンチリネンその1 サフィラン社のリネン

フランス産の原料を使い、フランスで高品質の紡績を行なっているのがサフィラン社です。糸のメーカーなので、実際に製織されているのはイタリア、中国、日本・・・いろいろですね。

ここの糸は高級品で品質が良いと評判で、以前ミナペルホネンの皆川さんにハードマンズの生地を見ていただいて、良い生地とおっしゃっていただきましたが、皆川さんはサフィランのリネンを使ってらっしゃるとのことでした。

もちろんサフィラン社の糸にもグレードがあり、全てが高級品ではありません。ただ、品質管理がしっかりしていることは間違いないでしょう。

Safilin - LINEN AND HEMP SPINNER - Safilin
Safilin, 100% European linen and hemp spinner, with respect for the environment and since 1778.

フレンチリネンその2 フランスの原料を使ったリネン

フレンチリネンと呼ばれるとき、ほとんどはこのケースです。原料の産地呼称となります。

世界全体でみると、フランス産(ノルマンディー地方+ベルギー・オランダのフランドル地方)フラックス(リネンの源料)は80%近いシェアを持っていますので、アイリッシュリネンもベルギーリネンもリトアニアリネンも、実はほとんどがフランス産の原料といっていいでしょう。

リネンには品種(10~11種類 Terre de LINによる)があり、さらに畑、生育状況によって品質の差がでます。Terre de LINでは10段階のグレードに分けているといいます。つまり、市場に出回るリネンの大半はフレンチリネンで、その品質は低級品から高級品まで玉石混淆であるということです。フレンチリネン=高級というわけではありません。

フランスで生育されたフラックス原料の70%以上は中国へ輸出され、紡績、製織されます。

フランス・ノルマンディー リネンの畑を訪ねて 2014.6
2014年6月 フランス・ノルマンディー地方のTERRE DE LINという会社に訪問してきました。ここは600軒のリネン(フラックス)農家から収穫されたフラックスの草からスカッチングという方法でリネンファイバーを取り除く作業を行い紡績工場へ出荷している会社で、併せて品種改良なども行っているフランスでも最大級の会社です。

ベルギーリネン

情報が少なく、正直よくわかりません。ベルギーはフランスのノルマンディー地方に隣接するフラックス原料の産地でもあります。かつてフランドル地方といわれたオランダを含めた地域で栽培がなされていますが、品質的には同程度だと思われます。フランスに比べると生産量は1/5程度です。

ベルギーにも紡績業者がありますが少数です。リネン布の製織量は27tほどとありますから、それほど多いわけではありません。原料から布まですべてベルギーというのは極めて少ないと思われます。

多くは、ベルギーもしくはフランス産原料を中国で紡績して、ベルギーで織っていると思われます。生産規模から推定しました。

リトアニアリネン

リトアニアでもフラックス栽培は行なわれていますが、フランスの1/20と少なく、リトアニアのリネンメーカーであるSiulas社を訪れた際に「リトアニア産のリネンを使っているのか」と聞いたところ「リトアニア産のフラックスは質が悪いので、我が社ではフランス産を使っている」とのことでした。

Siulas社の例でいうと、原料はフランス、紡績と製織はリトアニアということになります。リトアニアはリネンの製織メーカーが多く、ヨーロッパ各社へリネン布を提供しているようです。もちろん日本へも入ってきています。

ただ、一般的に高級品の細番手は苦手のようで、当社も毛羽で苦労しました。スライバーの状態を比べると良くわかります。

リトアニアSiulas社工場のスライバー

ハードマンズ認定工場(中国)のスライバー 毛羽がすくなく滑らか

なぜ違うかというと、原料となるフラックスの品質差だと思われます。実際工場に訪れましたが、ハックリング工程前のフラックスの原料はハードマンズの方が整っていてきれいだったからです。ハックリングからスライバーまでの過程はハードマンズの方が丁寧になされています。

これはSiulas社が悪いというわけではありません。中級ランクの要求が多いため、ハードマンズのような高品質ランクのリネン糸に使うような高品質のフラックスの扱い量が少ないためと思われます。

リトアニアのメーカー全体にいえると思いますが、雑貨等に使われるようなリネンの中級品クラス(25~40番手)を得意としています。フランスなどヨーロッパのリネン雑貨メーカーへ生地を提供しているのがリトアニアのリネンメーカーです。

Siulas社曰く「ドイツのHeimtextilには出展するが、パリのMaison&Object見本市では、当社のリネン生地の供給先が多いので、展示会には出ない」ということでした。

当社もビラベック社羊毛敷布団の裏面に使っているリネン生地はSiulas社です。25番手や40番手の生地では全く問題はありませんでしたが、60番手で毛羽が多く出ました。40番手で比べた場合でも生地の仕上がりに差がでます。リトアニアリネンはネップ(糸が太くなった部分)が多く、一方ネップの少ないハードマンズの生地は均一性が高く毛羽も少ないのです。

産地でごまかされないようにしよう

ネットの情報をみても、結構誤ったものが多いというのが感想です。一番多いのは「アイリッシュリネンはアイルランド産の亜麻で織った」というもので、元々はそうでしたが、ハードマンズでも、フランスやベルギー産の原料を使っていたそうですし、現在となっては「アイルランド産の亜麻」自体がありません。紡績工場もありません。

こんな記実もありました「フレンチリネンは、リネン生地の中でも最上級のクオリティ」。これも正しくありません。フレンチリネンは低級品から高級品までオールラウンダーというのが正しいでしょう。良いものもあれば、2亜の原料を使った低級品も多く出回っています。

結局、天然素材全てに云えることですが、まず上質な原料を揃える+丁寧に仕上げる このことに尽きます。産地名でなんとなく、という判断はなさらないでいただきたいと思います。

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