麻番手、綿番手、メートル番手のおはなし

よもやま話

番手とは=糸の太さ

このサイトの中でも「番手」という言葉が多く出てきます。100番手とか80番手とか・・・。私たちにとっては日常的なこの言葉も、多くのお客様に取っては「なんのこっちゃ?」あまり通じるとはいえない専門的な世界になってしまいますので、少しだけも判っていただけるように取り上げてみました。

この「番手」は糸の太さを表します。番手では、この数字が大きいほど細い糸となります。細い糸を紡績するには、良質の原料が必要なため、一般的には細い糸の方が高級で、高価になります。60番手よりは80番手が細く、80番手よりは100番手の方細くて、糸は高価です。

一方で、太い糸は安いのか、というと、太い糸はより大量の原料を必要とします。フラックス原料はかつての2倍にも上がってしまいました。一般的なグレードのフラックス原料を使うリネン麻の40番手に比べると、25番手の糸の方が価格が高くなっています。

麻番手と綿番手とメートル番手(毛番手)

この「番手」は素材によって異なります。綿番手、麻番手、メートル番手(毛番手)です。

これらは恒重式番手法と呼ばれ、一定重量(標準重量)における糸の長さが単位の何倍になるかによって表現する方法です(Wikipediaより)

一番ポピュラーな綿番手は、英国式番手が一般的に使われます。1ポンド(約453g)の重さで840ヤード(約768m)の長さのものを「1番手」とします。一般的にカバー等でポピュラーな40番手だと840ヤード×40=33,600ヤード(30576m)ということになります。

一方、麻番手は、1ポンド(約453g)の重さで300ヤード(約273m)の長さのものを「1番手」とします。私どものトップクラスは100番手、一般的には25~40番手が多く使われます。この麻番手は綿番手と同じ表記なのでややこしいのですが、麻番手×2.8=綿番手という換算になります。

一方、メートル番手Nmはもともと共通番手表示として登場しました。1kgの重さで1km(つまり1g=1m)のものを「1番手」とします。わかりやすいですね。ただ、毛番手として使われているものの、麻番手や綿番手では一般的に使われることはあまりありません。1Nm×1.68≒1麻番手、1Nm÷1.68≒1綿番手となります。ただ、ヨーロッパのメーカーのカタログにはNm表示も多いのです。例えばフランス・サフィラン社のWEBサイトはNm表示です。

https://www.safilin.fr/yarns/linen-fashion-clothing/?lang=en

ここには布用として「Nm 9.5 to Nm 50 is available」とありますから、麻番手16番手~84番手の糸ができますよ、ということになります。同じページでニット用は「Nm 16 to Nm 39」つまり「27番手から66番手」ということですね。フランス(EU?)はメートル法生まれの地だけに、表記が徹底されているのかもしれません。

ネットで換算表をアップしているところがありましたので、重宝しています。トスコさんのオンラインショップRaminoさんです。

番手について
番手とは 番手とは糸の太さを表す単位です。 麻番手  300ヤード(274.3m) 1ポンド(453.6g) 1番手 綿番手  840ヤード  (768.1m)      1ポンド  (453.6g)  1番手 毛番手  100...

ポリエステル系の糸は表記が異なります

Raminoさんの表をご覧いただくと、デニールやデシテックスという表記があります。

ポリエステルなどの合成繊維やその混紡糸はデニールが使われることが多いのですが、こちらは恒長式番手法といわれ、標準長9,000mあたりの糸の重さが1gのものを1デニールとされます。数字が大きくなるほど太い糸となり、恒重式番手とは逆です。

とにかく、繊維業界は伝統があるだけにややこしいわけです。興味がある方はネットで調べてみましょう。

単糸と双糸について

単糸と双糸についても説明しましょう。わかりやすくいえば、双糸とは単糸を2本揃えて1本の糸にしているものです。80番手の双糸(80/2と表示)と40番手の単糸(40/1)はほぼ同じ太さです。双糸は一般的にはZ撚り(左撚り)した糸2本をS撚り(右撚り)にして作るために、単糸に比べて強度が高くなるのと、細番手から作るので風合いが柔らかくなります。

ただシーツ系の麻織物で双糸使いの生地は、ほとんど見ることがありません。高価な80番手を双糸にして40番手の生地を作るメリットが少ないからでしょう。

綿織物では双糸はシャツなどに使われることが多いですが、寝具関係では少なくなりました。かつては羽毛布団用の生地に140番双糸 160番双糸 200番双糸 などの高級版がありましたが、今日では80番単糸、100番単糸などに代わられています。超高級品として300番双糸、330番双糸などがありますが、これも生地屋さんによると、原反(生機)が無くなったら終了とのこと。

主な理由としてはコストでしょう。200番双糸といっても、本当に200番の単糸を撚っているのではなく、精紡交撚糸といって紡績段階で、紡績と撚りを一度に仕上げて作るものがほとんどと聞いています。綿品種の改良が進み、単糸でもそれなりの強度と風合いが出せるようになってきており、残念なことですが、特に大量に生地を使う寝具ではコスト面で双糸は合わなくなっているのだと思います。

現在、私どもで扱う羽毛布団用の生地では、ドイツWeidmann社のTE270が経糸が120番手、緯糸が150番手でトップ。中間クラスで蔭山(株)の80番手と100番手の平織を使っています。20年前は40番手から60番手が中心で、80番手サテンが高級クラスであったことを考えると、ずいぶんと深化したものだなぁと感じます。

余談ですが、かつてGIZA45といわれたエジプト超長綿の最高峰を使った200番双糸のサテン生地、当時はローヤルナイルと呼ばれていましたが、その柔らかな風合いと光沢は、今日の100番サテンでは得られないものでした。

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