リネン麻とラミー麻とヘンプ麻 3種類の麻

麻のよもやま話

ラミー(苧麻) 日本古来から使われてきた麻

ラミーは日本古来から使われてきた麻で「苧麻」、または「からむし」といいます。麻のイメージにある、少し硬めのシャリ感のある素材です。

近江や越後では上質な麻生地(上布ともいいます)に皺を付けて、近江ちぢみとして、より涼感を高めたものを作ってきました。

今日では、主に中国四川省での栽培がなされていて、中国で紡績されています。湖南省などかつての産地がなくなり、耕地面積が減っていて、ここ数年では原料がかなり高騰しています。

 

リネン(亜麻) ヨーロッパで使われる麻

リネンはヨーロッパ、主にフランス東北部のノルマンディー地方を中心にベルギー・オランダで栽培されるフラックス草から生まれます。ラミーに比べるとソフトで、衣料や雑貨などに幅広く使われています。

産地はフランスが80%のシェアを誇り、主に中国で紡績されます。

リネンの実がなって刈り取りの直前(7月ごろ)

フランス・ノルマンディー(2014) リネンの開花(年に1週間だけ6月中旬)

ラミーとリネンとの違い

リネンの特徴は亜麻色と呼ばれるシルバーグレーの色です。ラミーが硬めでシャリ感があるのに対しリネンはソフトな仕上がりになります。夏の涼しさを競うのであれば、シャリ感があり、近江ちぢみのような皺加工をするラミーに軍配があがります。逆にオールシーズンでの使用を考えると、仕上がりがソフトなリネンの方がいいでしょう。

どちらにしても、湿気を素早く吸収し発散して、さらっとした触感なのは麻に共通した特徴です。

ヘンプ(大麻) かつては日本でも栽培されてきた麻

ヘンプ(大麻)も実は日本では昔から使われてきました。歴史的には麻といえば大麻のことを指すのだそうです。しかしながら、麻薬の原料となるために、現在日本では一般には栽培されていません(禁止されています)が、中国では品種改良して麻薬成分が非常に少なくなった産業用ヘンプが生まれています。

一年草で画像のように直ぐに大きくなり、肥料等の必要もないので、サスティナブルな素材として注目を集めています。リネンのように6年ごとの輪作にする必要もありません。

リネンとヘンプの違い

シャリ感のあるラミーと違い、風合いは柔らかめでリネンと似通っています。しかしながら細番手の紡績は難しいようで、地元滋賀の麻メーカーによるとヘンプの糸は切れやすいということですから、ヘンプ100%の生地は作りにくいとのこと。実際にはリネンと混紡したもの、綿と混紡したものが多く出回りそうです。

60番手のヘンプ100%の生地サンプルを手に入れたので掛布団カバーを作り使ってみました。使用感はリネンと差ほど違いがありません。ただ、生地コストが高いので、SDGsを謳うのでない限りヘンプを使う理由は感じられませんでした。

原料を比べると6年に一度しか栽培できない、しかも人件費の高いヨーロッパ産のリネンに比べ、中国で何度でも栽培できるヘンプはコスト的にはずいぶんと安いはずなのですが、このあたりは研究中です。

中国はヘンプの栽培に力を入れている(らしい)

ただ、昨今中国政府はヘンプ(大麻)の栽培を黒竜江省を中心に特区を作って栽培を促進しています。これは、ヘンプが、糸にするためのスライバーをつくる工程がリネンとほぼ同じ、しかも輪作ができるという利点があるためで、原料をほぼフランスに頼るリネンから、原料も含めて付加価値を作ろうとする戦略なのでしょうか。

現状は全部中国で作る割には、糸の単価が高いということです。リネンに代わる高級品をめざしているといえます。

以前に訪れた上海の麻メーカーも、これからはヘンプに重点を置くということでした。ラミーの栽培が減っていることからも、これから麻を取り巻く環境は変化していくようです。

3つの麻の違いはボーケンのHPに詳しく載っています。

亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)について - 一般財団法人ボーケン品質評価機構
リネンとは、亜麻(Linum usitatissimum)の茎からの繊維のことをいいます。ラミーとは、ちょ(苧)麻(Boehmeria nivea, Boehmeria tenacissima)の茎からの繊維のことをいいます。 ヘンプとは、...
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