リトアニアリネンでの失敗余話(2013)

よもやま話

バルト三国リトアニアはリネンメーカーが多い

リトアニアはバルト3国の最も西にある国で、ポーランドと国境を接している国です。間にロシアの飛び地があり、ロシアのウクライナ侵攻でテレビでも取り上げられることが多くなりました。古くはポーランド・リトアニア共和国として16~17世紀に非常に大きな領土を持っていた国です。

日本とは、第二次世界大戦でカウナスの総領事で、ユダヤ人のためにビザを書きまくった杉原千畝が有名で、首都ビルニュスにも銅像があります。

リネンについては昔からフラックスの栽培がおこなわれており、リネンのメーカーも非常に多いのです。マラゾット社の毛布工場もあり、フィンランドのラプアンカンクリ社の製品もリトアニアで製造されているなど、繊維関係の工場も多い国です。

リトアニアのリネン麻メーカー シウラス

そんなリトアニアとのご縁は、ドイツ・ビラベック社の羊毛敷ふとんの裏面に使うリネン生地を織ってくれる会社を探していたところ、ドイツのHeimtextil見本市でシウラスという会社に出会ったことです。

リトアニア・リネン シウラス社を訪問 2013.09
リトアニアにあるSiulasシウラス社はリネンメーカーの多いリトアニアの中でも大規模な工場を持っていて、リネン麻の紡績から製織、製品づくりまで行っている会社です。2013.9 工場を訪問した際のレポートです

2013年にリトアニアを訪れ、工場見学をして新しい生地を発注しました。

この時には、すでに帝国繊維さんからハードマンズのアイリッシュリネン60の生地を導入して、5色で染めたものを作っていました。これらの生地は後染めでしたので、きれいに仕上がるのですが、シャンブレーのような織り感が出ている仕上げにはなりません。

シャンブレーとは、経糸に白を置き、緯糸に色糸で織ることで、ナチュラルな仕上げになります。この時に発注した40番手のシャンブレー生地は、このような感じになります。左上が経糸が白、緯糸が生成りです。

25番手~60番手で色を揃えようと企画

シウラス社は多くのカラー糸を持っており、しかも発注の最低ロットが180mと少なく、しかもシャンブレーの場合途中で緯糸の色を変えることができるのです。非常に小回りが利くので、ヨーロッパのインテリア雑貨などの下請けも多いようです。

2013年の訪問の時は、敷パッドやシーツ用に25番手と40番手を、掛カバー用に60番手を同色で6色展開で揃えるべく企画をしていました。リネン麻の敷パッドは、表が厚地の25番手を、裏面は40番手でソフトにと、面を選べるように作り、シーツは40番手中心で、そして60番手は通常の平織りではなく、ジャガードのヘリンボン織を選びました。ヘリンボン織のリネン生地はあまり出回っていなくて、特徴があったからです。

60番手のヘリンボン織生地でカバーを試作・・・だが

リトアニアからはフィンエアーの航空便で生地が届きました。ヘリンボン織の60番手はこのような仕上がりです。上の40番手平織とペアになるのです。

もう少し大きくみると

なかなかいい出来、そう思い各色1反ずつをカバー加工に回しました。インテリア系の生地は150cm巾が多いのです。シングルの掛布団カバーを作るには、通常155cm以上の巾が必要です。そのため、端に5cm程度の接ぎが必要でした。

仕上がってきたカバーを社員に1枚ずつ渡して、試用テストです。問題は洗濯後に起きました。非常に多くの毛羽が出てしまったのです。ちょっとびっくりするような量です。そのまま試用を続けましたが、毛羽抜けで糸がやせてしまったのか、ヘリンボン織にしたこともあってか、継ぎ目の縫製が外れかけてしまいました。これでは、販売することができません。

残念ながら、掛カバーの企画は販売中止でした。500m近い生地が無駄になってしまいました。地元の生地メーカーに聞いてみたら、「毛羽焼き」の問題?等いわれましたが、翌年の展示会で「毛羽が多くて使い物にならなかった」というと「毛羽はどうしても出てしまい、しょうがない」とのこと。ハードマンズの60番手では毛羽は非常に少ないことを考えると、承服しかねる答えでしたが、いたしかたありませんでした。

原因はフラックスの原料と思われる

その答えは翌2014年に訪れたフランス・ノルマンディーのTerre de Linで明らかになりました。

フランス・ノルマンディー リネンの畑を訪ねて 2014.6
2014年6月 フランス・ノルマンディー地方のTERRE DE LINという会社に訪問してきました。ここは600軒のリネン(フラックス)農家から収穫されたフラックスの草からスカッチングという方法でリネンファイバーを取り除く作業を行い紡績工場へ出荷している会社で、併せて品種改良なども行っているフランスでも最大級の会社です。

つまり、リネン糸の原料となるフラックスにはいくつか品種があること、それらによって繊維長など品質が10段階に分かれるということでした。

シウラス社はどちらかというと細番手のものより、25~40番手のテーブルリネンやリネン雑貨などの生地が得意のようです。これは工場見学した時の生地サンプルなどからも想像がつきます。細番手の生地サンプルはほとんどなかったのです。

シウラス社のリネン紡績工程と、後で訪問したハードマンズブランドのリネン紡績工程では、明らかにハードマンズの方が手間がかかっていますし、スライバーを比べても違います。推測ですが、細番手に適したグレードのものより、中・太番手に適したグレードの原料を多く入れているのでしょう。

そのため、細番手の糸を紡績するとどうしても毛羽が多くなってしまうのではないかと思われます。ジャガードで織ったことも一因かもしれません。シウラス社が低品質という訳ではなく、本来得意とする部分と違う生地を要求したためと考えています。餅は餅屋、そのことを強く認識する一件でした。

シウラス社のスライバー

ハードマンズのスライバー

ビラベック社の羊毛敷ふとんにはシウラス社のリネンを継続使用

一方で、当店オリジナルであるビラベック社の羊毛敷ふとんや羊毛ベッドパッドの裏側に使っているリネン麻は、20番手クラスの太番手の生地なので、そのまま使っています。25番手や40番手の生地で作った敷パッドやシーツは問題は起きませんでした。ただ、40番手でハードマンズとシウラスを比べると、明らかにハードマンズの糸の方が均一性が高いことがわかります。

改めてハードマンズリネンの良さを、身に染みて知る結果となりました。

 

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